zekeの日記

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量子情報科学入門 読書記録 ~第一章~

線形代数量子力学やらないとな…

第一章やっていくぞい

第一章の内容

量子情報学を学ぶ上での基本的な計算などの紹介らしい。ここで詰まったらヤバイなと思いながら取り組む

量子情報学における一連の基本手順

まず量子系というのを考えるらしい。この系ではψという状態が存在して物理量M測定した後に測定値mをある確率で得ることをする。これらの特徴として状態が単一なものではなくいくつかの測定値を得る確率のある揺らぎの存在ということだ。この章では、これらの手順を定式化することを目標とする。

Dirac表記法

ここ、一回の線形代数でやったところだ!すっかり忘れてしまっていたので復習。Dirac表記法は一般的な行列計算を簡潔に表現する手法として導入される。ψ|\rangleは列ベクトルを表し、\langle|ψはその共役な行ベクトルを示す。すなわち\langle ψ|φ \rangle内積を表し|ψ\rangle \langle φ|は行列を表す。また|φ\rangle\langle ψ||ξ\rangle=\langle ψ|ξ\rangle|φ\rangleをも満たす。

量子bit系

Dirac表記法を踏まえて量子bit系の表現に取り組む。量子bit系の基本手順を定式化するには

  1. 状態を\mathbb{C^2}の単位ベクトルψ|\rangleで表す。
  2. 測定は\mathbb{C^2}の正規直行基\{φ_0|\rangle,φ_1|\rangle\}で表す。
  3. 測定値i=0,1は確率|\langle φ_i|ψ \rangle|^2で見いだされる。

という一連の計算をする必要がある。

 1に関しては状態は二次元の単位ベクトルでないといけないというのがポイント。古典系ではbitは0か1かのどちらかだが、量子系では|ψ\rangle=(a,b)^T=a|0\rangle+b|1\rangle (|a|^2+|b|^2=1)という風に無数の単位ベクトルをとりうることができる。ベクトルで表現することで量子状態特有の「重ね合わせ」を表現できるようになる。また状態と単位ベクトルは1:1対応ではなく、|ψ'\rangle=c|ψ\rangle (cは絶対値が1の複素数)を満たせば同一の状態として扱う。c=e^{iφ}と書け、φを位相と呼ぶ。これを位相の不定性と呼ぶ。これを複素数領域に展開したのがBloch球である。あらゆる量子bit状態はcos(θ/2)|0\rangle+e^{iφ}sin(θ/2)|1\rangle( 0 \le θ \le \pi,0 \le φ\lt2\pi)を満たすことに注意して3次元単位球を極座標表示する。

*1

こうすれば天頂を|0\rangle、地底を|1\rangleとしてパラメータθ,φで動き回るBlochベクトルを表現することができる。

 2は測定に関する内容である。正規直行基底を使った基底測定というものを行う。典型的な基底として|0\rangle,|1\rangleがありこれを量子計算分野では計算基底というらしい。基底はこれでなくとも正規直交の条件を満たせば、どんなベクトルの組でも基底になりうる。

3は任意の測定値をどのような確率で見出すのかを定量的に示したものである。

量子bit系の時間発展

一般に量子bit系は時間経過で変化するようだ。これは|ψ'\rangle=U|ψ\rangleで表記される。Uはユニタリ行列である。このような状態の時間変化をユニタリ発展と呼ぶ。有用なユニタリ行列にPauli行列、Hadamard行列、Bloch球上回転などがある。時間発展した後のある測定値を見出す確率を計算する方法は同様である。

量子bit系の測定過程

 量子bit系では時間経過による変化だけでなく、測定による変化があるらしい。不思議な話だ、測定するだけで状態が変わってしまうとは!そういえば量子力学の文脈でもいくつかの固有状態の重ね合わせであった波動関数が観測によって1つの固有状態に収束するといった話が出てきていた。これを定式化する。{|φ_0\rangle,φ_1\rangle}による測定を行った結果、測定値i(i=0,1)を観測されたとしたら|ψ\rangle \longmapsto |φ_i\rangleに状態が変化する。このように量子状態を測定すると状態の変化は避けられないようである。

多量子bit系

これまでは1つの量子ビット系しか考えてこなかったが、2つ以上の場合も考えていく。まずは2-量子ビット系では

|ψ\rangle \otimes |φ\rangle :=\left( \begin{array}{ccc} a_0|φ\rangle \\ a_1|φ\rangle \\ \end{array} \right):=\left(\begin{array}{ccc}a_0b_0\\a_0b_1\\a_1b_0\\a_1b_1\end{array}\right)

と書ける。これはテンソル積であり\mathbb{C^4}の単位ベクトルとなる。次元が増えた以外は今までと同じように処理できるようである。しかし実際はこの重ね合わせ状態だけでなく、これらをさらに重ね合わせた状態が存在するので厄介だ。上式のように書ける状態を積状態、そうでない場合をエンタングル状態いう。エンタルグル状態は第0章で紹介があったな…。多量子bit系では計算基底の測定を行ううとし、ここでいう計算基底は\{i_0 \otimes i_1 …\otimes i_n\}_{i_0,i_1,...i_n=0,1}を示し、\{(1,0,0,...)^T,(0,1,0,...)^T,...,(0,0...0,1)^T\}となる。つまり一般的に状態は|ψ\rangle=\Sigma_{i_1,...i_n=0,1}x_{i_1}..._{i_n}|i_1i_2...i_n\rangleと表せる。多量子系では部分系のみを測定することが可能だ。n-量子bit系をm-量子bit系の計算基底によって測定する。このmbitは\mathbb{C^2}\otimes\mathbb{C^2}\otimes...のうち左mbitを指すことにする。この時、\langle i_1...i_m|ψ\rangle:=\Sigma_{j_{m+1}...j_{n}=0,1}x_{i_1,..i_m}j_{m+1}...j_n|j_{m+1}...j_n\rangleとなる。これは(\mathbb{C}^{2})^{\otimes n-m}となることに注意する。これをもとに、測定値i_1,i_2...i_mを見出す確率||\langle i_1...i_m|ψ\rangle||^2を求める。最後に観測後の状態は|i_1...i_m\rangle\otimes\langle i_1...i_m|ψ\rangle/||\langle i_1...i_m|ψ\rangle||に変化する。

この章を終えて

この章にある内容は理解したが、本質には程遠いなという感想を得た。例えば時間発展でなぜユニタリ行列を使うのか、どうして状態は二次元の単位ベクトルで表記可能なのか、具体的に基底測定というのはどのような測定なのかと、疑問は湧き出るばかりである。しかし、こういった本の特徴として後で詳しくやるよ!という文言を残していくので、第二章以降もこの調子で読み進めていきたい所存である。またこの本では第0章に明記してあるのだが、量子力学などの物理的背景を若干無視しがちな傾向にある。本書では詳しく取り扱わないようだが春休みの間にスピンの定量的理解を進めたいと思う。また線形代数の復習も進めたい。

以下ノート

以下はこの章を読み解くうえで作った自分なりのノートである。